革は命を革(改)めるの意味。考え方・生活スタイル・仕事・人間関係・環境などの刷新を象徴する卦です。動物の毛が生え変わるように、人生の衣替えをする時。外卦兌は秋を、内卦離は夏を示すので、夏から秋への移行期(土用)に見立てることができます。古くなったものを新しいものと入れ替えるなど。政治家や官僚でもない限り、社会の改革というような大げさな意味に捉える必要はありません。それぞれの生活圏内での意識的な変化について気を配っていれば良いのです。身近な話では、例えば恋人が髪型や着こなしを変えてイメチェンを図ったかもしれません。それに気がついてあげられれば、それだけでも相手は嬉しいでしょう。
綜卦は火風鼎。鼎とは三本足で立つ器(鍋)のことです。鼎立(三者が相互に牽制するなどして関係し合うこと)。三権分立や三位一体のようなイメージですが、三点による支えと共通点における繋がりによって成り立っていることを象徴しています。もっとも、この3という数字にとらわれる必要はないと思います。僕は、個人であれ組織であれ、それぞれの微妙な力関係が働いて連立していることを表現する数字だと捉えています。現象としては、例えば革で社内の人事異動があったり部署の配置換えが起きたとして、その後の改めて構築されていく人間関係や仕事の割り振りなどが鼎になるといった感じです。
裏卦は山水蒙。蒙は、まだ知識や経験が不十分な者を教え導く卦です。主に子供に対する教育を示しますが、新入社員に対する先輩、習い始めた生徒に対する先生という関係でもあります。情報の曖昧さ・理解不足・見通し(視界・視力)の悪さ・未熟さ・落ち着きのなさ(子供的な振る舞い)に対する戒めなどが蒙の象意です。五行で言うと外卦艮(土)が内卦坎(水)を克する関係。蒙にある時は、先見性が低いために自力では具体的な目標を見出すことが難しいので、まずは手引きや道先案内をしてくれる人を求めましょう。役に立ちたい気持ちが強くても、それに足る力量がなければ、失敗して逆に周りに迷惑をかけてしまいます。潔く教えを請うことが近道です。
一方の革。五行の生克では内卦離(火)が外卦兌(金)を克する関係です。蒙とは逆に内から外への作用。そして、その働きかけが顕著な場合、まるでリフォームでもしたかのように場の雰囲気をガラッと変えてしまいます。それだけ周囲への影響力を持っている卦ですが、自己中心的にならないように何度も話し合いが必要です。元々、革は一瞬でスイッチするタイプではありません。セーターを編むように、出来上がりをイメージしつつ、長期的な展望を持って地道に取り組む性質です。その集積の結果として目に見える成果が現れ、それに伴って自分に対する周りの評価も変化するのです。「ローマは一日にして成らず」とか「千里の道も一歩から」という諺を玩味すると良いと思います。
類似関係は沢雷随。実は補完関係も沢雷随ですので、まとめて書きます。随は従うという意味で、外卦兌に対して内卦震が積極的に付いて行くという形になっています。兌は喜び(楽しみ)、多くは果実としてのメリットを示すので、震は内心の欲に任せて兌を求めてしまうわけです。ただし場合によっては、子供が大人の後ろを金魚のフンみたくまとわり付くようなことをして鬱陶しがられたり、相手から得るものがないと見るや付き従う人を替えるため、心変わりしやすい人と思われるかもしれません。これによって縁を失うことがあるので注意が必要です。離縁したいのであれば、それでもいいですが…。ともかく、周囲の状況に応じて関係や環境を変える傾向があります。
革の場合も、外卦兌のメリット――刷新されることによる甘い果実を味わおうとしている点では随と同じです。異なるのは作用の方向性です。随が外的な状況や相手によって自分が変化するのに対し(蒙も作用の流れは同じ)、革はまず自分が変わることで、それが波及して家族や友人などの身近な人達に影響を与えていきます。蒙では指導を受けながら知識や技術を身につけ、随では有力者や気に入った場を求めて行動します。これらは外>内の関係。それが革では、自己啓発によって自らの考え方(意識の持ち方)をチェンジさせることで生活や人間関係に変化をもたらそうとします。つまり内>外の関係です。
随&革は屯&晋から15番目で2巡目の6。共に周囲との調和的な交際を課題としている数字ですが、今書いたように働きかけに違いがあります。15は周囲との関係を変える性質があり、色々な場所へ行ったり、色々な考え方をする人と意見を交わすことが多くなります。そうした中で、人や社会に対する見方が変わったり、逆に自分が相手や社会を変えるような影響を与えていることに気がつきます。こうした体験を経ることによって、幅の広い見識を身につけることができるので頼りにされることも多いでしょう。ところで、随の次は蠱ですので、補完する際のヴィジョンは「物事が停滞して腐らないように更新し続ける」ということになります。この性質は革の次の鼎とリンクするものがあります。
<爻意は後日、追加更新します。>