※おまけコラム:月相(ムーン・フェイズ)と吉凶判断について
月相(ムーン・フェイズ)に関する著作は結構多く見られます。
中には、かなり実用的と思われるものも少なからずあり、調べてみると面白いものです。
例えば、物事のスタートに際しては、通説的には月の満ちてゆく時(増光期)が吉兆だとされます。
光が増すということが、新規で行うことの発展を象徴するからです。
より正確に言えば、満ちている時もしくは月輝面のパーセンテージが高く、光量が多い時で、かつ諸惑星から痛手となるアスペクトを受けていない時が吉兆です。
つまり、単純に「満ちているから吉で、欠けているから凶」という二元論では正しく判断することはできません。
そもそも満ちゆく時と欠けゆく時は、易で言えば離と坎であり、そのどちらにもいわゆる“飴と鞭”があって、一方的な善悪吉凶にはならないのです。
この他にも、月の位相の大まかな分類として、「新月〜上弦、上弦〜満月、満月〜下弦、下弦〜新月」と4つに分けたり、三日月などの4区分の中間的要素も含めて8区分として考えることが、よく行われています。
もっと細かくは、太陽と地球と月の関係で日々変化してゆく月相に対して27〜28の性格付けがなされています。
神秘主義の思想家であり詩人でもあるウィリアム・バトラー・イェイツによる西洋的な解釈もあれば、インド占星術によるナクシャトラ、あるいは東洋的な28宿(27宿)の解釈もあります。
ただ、これらは主に各月相における基本的性格を述べたもので、それ自体を単純な吉凶判断に用いるのは、あまり効果的とは言えません。
月は太陽の光をはじめとして、諸惑星の不可視の力をフィルタリングして地球へと反射する媒体となっているのだとすれば、重要なのは、月に影響を与える諸条件のほうだと考えるのが自然だと思います。
もし悪い状況にある星の影響を地球に反射していたら、それは満ちてゆく時であっても凶でしょうし、月の光の反射率が高い時であれば尚更でしょう。
反対に、欠けてゆく時であっても良い条件の影響を反射していたら、それは吉的作用をもたらす。
光が増す時期と減る時期の意味、それに月への諸惑星のアスペクト等を複合させて考えることが必要なのです。
要するに、一般にハード・アスペクトと呼ばれる角度を月が諸星(特に火星や土星などのマレフィック)と形成している時は、基本的に物事に克服すべき試練が発生しやすいでしょうし、逆に、イージー・アスペクトであれば容易だが惰性に流されやすい状況が形成される。
これは初歩的な解釈ですが、やはり重要なところだと思います。
またノーアスペクト即ちボイドの時は、「物事が虚ろになる」という傾向があります。
吉凶の出方は使い方次第ですが、通常は手を出さないほうが無難でしょう。
また、満ちている時とはいえ、新月付近や半月(上弦)の時は避けたほうが良いと思います。
新月では月の光は視認できず、半月では二元原理を請け負うことになるからです。
その日、もしくは少なくとも12時間はタイミングをずらす必要があると言われていますし、私もそう思っています。
月を視認できない、つまり月の光が地球に反射されなければ、その影響力は無意識面の闇へと浸透してゆき、現実面には出てきません。
よく新月の時には瞑想が有効であると言われますが、自身の内面に何があるかを知るために、(身を清め、断食をして)静かに坐して内観するわけです。
二元原理とは光と闇ということですが、現実に言い換えると例えば、損益や成否、勝敗や善悪、精神と物質、日常と非日常といった両局面の事柄です。
特に旧暦の7日の半月は、山沢損と風天小畜(月によって異なる)になりますので、特殊な事情でもない限り用いないほうが良いと思います。
それよりは、一日置いた8日の風雷益もしくは天沢履を選んだほうが良いでしょう。
(※ただし、いずれも太陽と月が90度の接近のスクエアになっていないという条件で。上手く方向転換できなければ挫折する恐れがあるためです)
ちなみに、満ちている時で最も有効的な月相を強いてあげるならば、旧暦でいう12日の時でしょうか。
この日は易卦対応では地風升と火天大有になり、上昇気流の最も強い時に当たるからです。
それでも、舞い上がったために我を忘れたり、謙虚さを失って他者を省みなかったりすれば、それ相応の問題は出てきますから、個人的には、あまり月相にこだわる気はありません。
結局、一面的な見方ではなく、状況に合った「然るべき時」を選択できる視野が必要だからです。
月相や月へのアスペクト以外にも、月のある星座やハウス、地平線より上か下か、時には昼か夜か、ということにも左右されるでしょうし、そもそもスタート時の全体的なホロスコープ配置にも気を使う必要がありますが、この辺りは専門的になるので初心者には難しいかもしれません。
(より有用な条件を期する場合、地球との距離関係、月を含めた内惑星の逆行・留・近地点・遠地点などの天文現象(フェノメナ)も考慮したりする)
また、こういったことはエレクショナルやホラリーにて作用が見出されやすく、ネータルのケースで月が欠けているから凶(悪運)なんて論は特に馬鹿げています。
なお、「然るべき時」の選択には幾つもの条件が複雑に絡み合うことが常であり、最高や完璧さを求めても得られないことのほうが多いものです。
むしろ万能に機能するタイミングなど存在しないと言ってもいいでしょう。与えられた条件の中で、最良と思えるものを見出す判断力が必要になってくる。
そのため占星術師に求められる技術は、物事(活動)の機軸となるところに長所を据え、そこに直接、短所が影響しないように配慮すること。
この辺り、紫微斗数から学ぶことは多いのではないかと思いますので、そういった面からも東西の占術が対等に、そして真摯に研究されることが望まれます。